文学者として。

源内は、戯作(小説)では「風来山人」というペンネームを使いました。
その他にも色々とペンネームを多用しています。
浄瑠璃作家としては「福内鬼外」、これは統一しているようです。
若い頃の俳号は李山。江戸へ出てからは、違うものも使用したようです。

★ 風来山人 他。

『根南志具佐』・・・小説。実際にあった人気歌舞伎役者の溺死事件をヒントにしている。女形に恋をした閻魔大王やら河童やらの物語。
 有名なのは、四之巻・両国橋の描写。鴨長明も夏目漱石もスティーブン・キングもかなうまいと思うほど、すばらしい文章です。リズムの良さや縁語のみごとさだけでなく、源内が人々を愛し、「下世話だが生命力のある風景」に愛情を抱いているのが感じられます。私はここを読んで、「何があってもあなたについていく」と思うほど、源内に惚れこみました。

『風流志道軒伝』・・・小説。ガリバー旅行記に似たストーリーです。浅草寺境内に、棍棒を叩いて面白い話をしながら精力剤を売る坊さん(の、かっこをした男)がいました。実在の人物です。彼が、色々な不思議な国を旅する物語です。

『長枕褥合戦(ひとねかつせん)』・・・浄瑠璃形式の小説。舞台化はされていない。作者名は「志道軒高弟・悟道軒」。尼将軍政子にHな悪霊が取り憑いて、政子も淫乱になってというストーリー。批判と反骨に満ちた内容で、筆遣いもとんでもなくみごとで。ポルノと位置づけする学者もいますけど、あまりに文章がすぐれているせいか、奥に思想があるせいか、全然いやらしくないですが。

『痿陰(なゆまら)隠逸伝』・・・小説ではなくエッセイと思う。作者名は「風来山人・悟道軒」。性行為を人類の(日本や中国の)歴史になぞって揶揄する内容。人の歴史とかは何ぞや?と問う問題作・・・かもしれないけど、やはりポルノに分類されることが多い。

『根南志具佐後編』・・・たぶん小説。全集には入っています。古典を勉強して読んだら、内容をまとめてここを更新します。もう少しお待ちを。

他にエッセイ多数、友人の本などへの序も多数。衆道関係の細見(ガイドブック)多数。
特に、当時は「衆道といえば源内先生」「蔭間茶屋のことは源内先生に聞け」だったようです。蔭間茶屋や衆道関係の入門書やガイドブックには、序も書いていますが、たぶん本文や監修も源内と思われる物が多いです。「菊座(肛門)の筋が8本の蔭子が質がよく、もっといいのは16本」とか書いてあるのを読んだことがありますよぅ。天皇の紋所、皇室関係者の菊のご紋の花びらは8枚、直の天皇家は18枚ってことをもじっているわけで。こんなヤバイこと書くの、源内っぽくないですか?(笑)


★ 福内鬼外(浄瑠璃作品)

『神霊矢口渡』・・・現在も上演されているのは、この作品のみ。
新田義興の弟・義峯が妻・うてなと共に落ち延びて来たのは、矢口渡。渡し守・頓兵衛の娘・舟は、義峯に恋をしてしまう。実は頓兵衛は義興を密告して賞金を得ていた。舟は義峯を逃がす為に命を捨てる。義峯を船で追う頓兵衛に、どこからともなく矢が刺さる。これぞ義興の裁き。神聖なる正義の矢だった。・・・というような話。超訳ですみません。
「琥珀のチリ」や「磁石の針」という描写が源内っぽいと言われています。

『源氏大草紙』
『弓勢智勇湊』
『嫩榕葉相生源氏』
『前太平記古跡鑑』
『忠臣伊呂波実記』
『荒御霊新田新徳』
『霊験宮戸川』
『実生源氏金王桜』


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